漢方の国際化

中国からの留学生、高鵬飛さんが博士号を取得されました


恩師である渡辺賢治先生と一緒に


中国から当センターに留学(2006年10月-2011年3月)されていました、高鵬飛(Gao Pengfei)さんがこの度めでたく、本大学医学部にて相磯貞和漢方医学センター長の指導のもと博士号の学位を取得、帰国されました。そこで今回、ご帰国前に行いましたショートインタビューについてご紹介いたします。


科学的手法で考察された日本の漢方を学んでみたい


■ 日本へ留学されたのはどうしてですか?

私は中国で中医師をしていましたが、近年「ストレス社会」という言葉が私の出身地の中国でも聞かれるようになり、多くのストレス患者を抱えて、漢方薬による治療を行っておりました。しかし治療は成功しても、科学的な薬効機序は不明なままでした。私はストレスの科学的なメカニズム研究に大変興味を持ち、漢方の科学的な研究が熱心に行われている日本で、ストレスに関する研究をしてみたいと考えました。そのような折に、国費留学生として来日する機会を得ることができたというわけです。


日本の漢方は大きく発展すると信じています


■ 高様のお考えになる「漢方」とは?

漢方は、「西洋薬のような薬として臨床で使われているもので、西洋薬に比べ、不定愁な症状の改善により有効」ではないかと考えております。日本では、漢方の有効性について、科学的な研究が非常に熱心になされています。現在、漢方の人気が徐々に高まっていますが、今後はもっと大きく発展すると信じています。

■ 日本の漢方の良いところを教えてください。

まず、品質が高いことです。次に、中国と比べて「傷寒論」、「金匱要略」、「万病回春」、「和剤局方」中の方剤が非常に多いことですね。 数百年以上に渡って臨床で使われているので方剤の信頼度も高くなっていると思います。三つ目には、簡単な理論(方証相対)なので、勉強しやすいことが挙げられます。また、実践を大切にしていることも日本の漢方の良いところだと思います。


ストレス性疾患における漢方の薬効機序を解明したい


■ 博士論文のテーマを教えてください

“Maternal stress affects postnatal growth and the pituitary expression of prolactin in mouse offspring. (産後の母マウスへのストレスがもたらす仔マウスの成長とその下垂体のプロラクチンの発現への影響)” です。

■ 高様の研究テーマについてお聞かせください

産後の母親のストレスは母親本人のみならず、子供にも精神的•肉体的影響を及ぼすことが報告されています。これまでの基礎研究においては、仔マウスへの精神的影響について数多く報告がなされてきましたが、成育への影響についてはあまり報告されておりませんでした。そこで本研究では、産後の母マウスにストレスを負荷し、仔マウスの成育に与える影響およびそのメカニズムを検討いたしました。相磯貞和先生には丁寧なご指導をいただきました。

■ なぜそのテーマを選ばれたのでしょうか?

近年、乳児期におけるストレスが小児の正常な発育を阻害する可能性が示唆されています。例えば、小児期の虐待と無視が糖尿病、心臓疾患、うつ病、総合失調症などの病気の発病率を増加させ、低成長を引き起こす原因になるとの報告があります。さらに、愛情剥奪症候群では子どもの下垂体障害が発生する事が明らかになっています。これら先の研究を受けて、さらに発展させるべく、本研究をテーマに選びました。私は、中医師としての経験から、ストレス性疾患における漢方治療の薬方機序について、非常に興味を持っています。本博士課程において漢方薬の薬効機序解明には至らなかったのですが、その前段階として、ストレスの与える影響やそのメカニズムについて研究を行いました。


日中の伝統医学の架け橋として、日本の漢方の勉強を続けてまいります


■ 最後に、今後のご予定をお聞かせください

今後は日本で4年半勉強した知識を活かし、中国でも日本保険用148方剤の臨床研究を行いたいと考えております。また、証に基づいての臨床EBMも作成したいと考えております。さらに、日中の伝統医学の架け橋として、恩師渡辺賢治先生を通じて、漢方の勉強を続けてまいります。渡辺先生とは、将来、共同研究も計画中です。


— 高様、4年半どうもありがとうございました。今後も、日中の架け橋としてご活躍期待申し上げております —

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