• Q1

    安全に漢方治療を受けるには、どうすればいいですか?

    A1

    漢方薬には、医師が処方する医療用のものと薬局などで購入できる一般薬があります。こうしたものは医師、または薬剤師からの説明をよく受け、注意して使えば安全に用いることができます。しかし最近では、通販や平行輸入品なども氾濫しています。こうしたものは厚生労働省の認可を受けていないものなので個人の責任において使用してもらうことになります。最近も中国からのやせ薬に日本では未認可のフェンフルラミンという向精神薬が混入されていました。そのようなものは漢方薬ではないのですが、一部に誤解を招くような報道があったことも事実です。
    そのようなことを避けるためには漢方に詳しい医師・薬剤師と相談の上漢方薬を服用することをお勧め致します。

  • Q2

    漢方治療の向いている病気、向いていない病気を教えてください。

    A2

    漢方治療の向いている病気
    ・胃腸障害(腹痛、下痢、便秘)、慢性肝炎
    ・アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、喘息、花粉症、蕁麻疹など)
    ・不妊症、習慣性流産などの産科疾患
    ・月経不順、月経痛、冷え症などの婦人科疾患
    ・心身症、自律神経障害、神経症など
    ・高齢者の老化にともなう種々の症状(前立腺肥大、しびれ、膝痛など)
    ・高血圧、糖尿病など生活習慣病
    ・風邪をひきやすい、おなかを痛がるなどの虚弱児童
    ・癌や膠原病などに伴うさまざまな体の不調や体力低下
    漢方治療の向いている病気、向いていない病気
    ・がんや腫瘍などの手術が必要な病気
    ・ 抗生物質が必要な感染症
    ・緊急処置の必要が高い病気(急性腎不全、急性心筋梗塞など)

    慶應義塾大学病院漢方医学センター診療部には乳児から高齢者まで老若男女を問わず受診されています。疾患としては上記に挙げたような様々な疾患で受診されます。よくこの病気は漢方がいいのでしょうか?現代薬がいいのでしょうか?という質問を受けます。どんな病気に対しても漢方は適応になる、と言っても過言ではありません。大切なことは「治すべきは病気ではなくて患者さんの体である」ということです。どちらが主となり従となるかは病状により異なりますが、現代医学と漢方医学のいい点を組み合わせることで、より良い治療効果を生むことが多いと考えて下さい。こんな病気が漢方で治るだろうか、と悩む前に是非とも御相談下さい。

  • Q3

    西洋薬(新薬)と漢方薬は、どこが違うのですか?

    A3

    西洋薬(新薬)は、人工的に化学合成された物質がほとんどで、その多くは一つの成分で構成され、強い薬理作用を示します。一方漢方薬は原則として、二種類以上の天然の生薬で構成されています。多くの成分を含んでいるため、一つの漢方薬で、いろいろな症状に対応することができます。
    「例えば高血圧にはこの薬」というように、それぞれの症状に対して薬が対応する西洋医学と異なり、漢方薬の場合、体はひとつと考えて「この人にはこの薬」というように薬を選んで治療を進めます。ですから時には同じ病気でも人により薬が異なったり、全く違う病気の人に対しても同じ薬が出ていたりします。

  • Q4

    漢方治療(漢方薬)は保険がきかないのでしょうか?

    A4

    漢方薬は保険がきかないのではないかと思われている方がまだまだ数多くいらっしゃいます。ある調査によると7割以上の人が漢方薬は保険がきかず高い、と思っていらっしゃいます。しかし、漢方薬は昭和51年から保険薬として収載されており、現在では多くの医師が日常診療で使っております。中には煎じ薬でも保険の効く施設もあります。ただし、こじれた病状では自費診療による漢方治療で事細かに診てもらうことが必要な場合もあります。漢方治療を受ける前に受付あるいは担当医に、保険がきくかどうかをしっかりと確認してみてください。

  • Q5

    漢方薬は値段が高いと聞きますが、本当ですか?

    A5

    保険診療で使う漢方薬は、西洋医学的な薬と比べれば、漢方薬のほうがずっと値段が安い場合がほとんどです。最近の医療経済の研究では「漢方薬を使用した方が医療費は安くてすむ」という報告があります。漢方薬は一つの薬で、その患者さんの持つ多くの病気を治します。特に高齢者ではいろいろな訴えを持っていらっしゃる方が、たくさんいらっしゃいます。その訴え一つ一つに対応する薬を使うのが西洋医学のやり方ですので、自然と薬の種類が増えてしまいます。それに対して漢方治療では、体は一つと考えて、その調節をするための漢方薬一つで対応するのが基本です。そういう意味からも漢方薬を飲むことは医療費の節減にもつながるのです。

  • Q6

    急性の病気(当然の発熱など)に漢方薬は、効きますか?

    A6

    意外に思われるかもしれませんが、風邪は漢方薬の最も得意とする領域の一つなのです。そもそも漢方の原典ともいわれる『傷寒論』という本(1800年前に書かれています)には、急性・熱性の感染症の治療について事細かに書かれています。西洋医学は、抗生物質の発達により急性疾患に対して多くの成果を上げてきました。しかし風邪などの時、(例えばウイルスに対して最近やっといくつかの抗ウイルス薬が出てきましたが)まだまだ西洋医学でも十分な治療効果はあげられていません。特に昨今、解熱剤が脳炎を起こす副作用が認められたため、多くの医師が漢方薬を風邪に対して使い始めました。このように急性の病気に対しても漢方薬は、十分に効果を発揮します。

  • Q7

    風邪の時に葛根湯を飲んだのにあまり効果がありませんでした。

    A7

    「風邪には葛根湯」というのは、落語にも出てくるくらい有名な話です。本来の漢方治療では、風邪と一言でいっても患者さんの体質、状態によって薬が全く異なります。「熱がっているか?寒がっているか?」「汗をかくか?かかないか?」「便はどうか?」「食欲はどうか?」「普段の体力はどうか?」など風邪とは関係がなさそうに見えることを総合し、患者さんの状態を考慮したうえで漢方薬を選ぶのです。風邪の治療の際に、専門家が使う漢方薬は葛根湯だけでなく、20種類以上あります。専門家に相談して漢方薬を飲まないと、逆に不快な症状が出て一向に治療効果が上がらない、などということにもなりかねません。

  • Q8

    漢方薬は長く飲まないと効きませんか?

    A8

    必ずしもそうではありません。病気の状態にもよります。たとえば風邪のひきかけに漢方薬を使って、うまく薬があっていれば、30分ほどで効果は実感できるはずです。病気の重症度や個人の体質差がありますので、はっきりと言うことが出来ませんが、風邪の初期の場合などは、1~2回の服用で治ることがあります。反対に慢性疾患などでは、すぐには効果があらわれにくいようです。
    実際に漢方薬が使われる機会は、西洋医学でも長期の治療になる慢性病の場合が多いのです。年単位の服用になることも珍しくありません。しかしこうした場合でも、服用中の漢方薬が患者さんの状態にあっているかいないかは、2週間から4週間ぐらい服用を続けてみれば、判断できます。効果がないと判断がつけば、薬の種類を変更する必要があります。患者さんの状態は毎日、変わっていくものですから、それに合わせて薬を変えていくということもよく行います。効果がよくわからないままに、漫然と同じ漢方薬を長い間飲み続けるようなやり方は、避けた方が賢明です。

  • Q9

    煎じ薬を続けるのは、大変ですか?

    A9

    本来の漢方薬は煎じて飲むものが多く、確かに手間はかかります。しかし、現在普及している多くの漢方薬はエキス剤と呼ばれる粉薬の形態です。中には錠剤、カプセル剤もあります。これらの剤型であれば皆様が飲み慣れている普通の薬とほぼ同じような手間で服用ができます。
    エキス剤はいわばインスタントコーヒーやスープのような物で大体の病気には対応できますが、細かい調節を必要とする場合には煎じ薬の方が好ましい場合もあります。煎じ薬は、確かに手間はかかりますので、お忙しい方では挫折してしまうこともあります。しかし、毎日煎じることも健康意識を高め、治療の一つと考えております。あなたに合った飲み方で是非続けてみてください。

  • Q10

    通信販売で漢方薬を手にいれたのですが、飲んでもいいでしょうか?

    A10

    最近、通信販売や新聞の広告などに「○○によく効く漢方薬」という宣伝文句をよく目にします。中には中国からの輸入品で、日本では薬として認められていない成分が入っているために問題を起こした例もあります。宣伝のうたい文句に惑わされないようにし、きちんと専門の医師・薬剤師に相談の上で漢方薬をお飲みになることをお勧めします。

  • Q11

    漢方薬と民間薬は、どう違うのですか?

    A11

    漢方薬と民間薬はともに生薬を使用し、何らかの薬効があり、古くから伝統的に使われてきたという点では同じです。しかし、漢方薬は漢方医学の理論に基づいた処方の構成がなされており、原則として二種類以上の生薬が配合され、製法・用法・用量が決まっています。一方、民間薬は伝承的・家伝的な薬で、概して一種類の生薬からなり、用法・用量も詳細には決まっていません。
    最近では多くの民間薬、健康食品が巷間に出回っておりますが、漢方薬はあくまでも薬です。きちんとした医師・薬剤師の指導のもとで服薬するものであることを強調しておきます。

  • Q12

    友人が漢方薬を飲んで調子がよくなったとのことです。同じ漢方薬を飲みたいのですか?

    A12

    よく「友達から漢方薬を勧められた」「親戚の病気が良くなったので漢方薬を飲みたい」という方がおられます。漢方治療は、個人個人の体質を重んじる医学であり、他の人に良かった漢方薬と同じものが本人にもいい、という保証はありません。実際に、親戚に勧められた漢方薬を服用して具合が悪くなったという方もいらっしゃいます。その薬が本人に合っているかどうかは、専門家の判断が必要です。素人判断で他の人の漢方薬をお飲みになるのは、大変に危険です。他人の薬をもらって服用したり、自分の薬を他人に勧めたり、ということは控えてください。
    そのようなことを避けるためには漢方に詳しい医師・薬剤師と相談の上漢方薬を服用することをお勧め致します。

  • Q13

    漢方薬には、副作用がないのですか?

    A14

    残念ながらそうとはいえません。漢方薬にも副作用がありうることを是非、知っていていただきたいと思います。漢方薬は基本的に薬用植物を主体とした生薬を材料として作られていますが、自然の物だから安全とは言えません。例えば胃がもたれたり、食欲がなくなったり、下痢をしたり、血圧が上がったりすることもあります。これらは漢方薬の含まれている成分から予測できる副作用です。薬を調節することで比較的早期に問題は解決します。
    例えば甘草という生薬に含まれるグリチルリチンという成分のために、血清中のカリウムの値が下がり、血圧が上昇する、などの副作用が現れることがたまにあります。甘草は多くの漢方薬に配合されているだけでなく、調味料や甘味料などにも使われているため、医師も患者も知らぬ間に大量の甘草を服用する結果になっていることがありうるのです。血液などの検査を定期的に受けるようにお勧めします。
    しかし、中には含まれている成分だけでは説明がつかないような副作用もあります。たとえば、そばアレルギーの人がいるように、一種のアレルギー反応で副作用が起こる場合です。この場合には、皮膚に湿疹がでます。その他、間質性肺炎や肝障害も予期できない副作用です。薬である限り、西洋薬であろうが漢方薬であろうが、副作用はあるのです。大切なことは、このことを医師の側も患者さんの側も知り、そのうえで漢方薬が持っている独自の性質や特徴を理解して、正しくつき合うことです。

  • Q14

    高血圧で漢方薬を飲み始めたので、西洋の高圧剤はやめてもいいですか?

    A14

    西洋の薬には、西洋の薬の良さ、効き所があります。漢方薬には、漢方薬の持ち味があります。いきなり切り替えるのは賢明な方法とは言えません。漢方薬の効果が出始めれば、自然と西洋薬を調整できることもあります。薬を飲むかどうか?を判断する場合には、かならず薬を出してくれている医師と相談して決めるべきもので、自己判断で中止することをしてはいけません。いきなり血圧が上がってしまうこともありますので、注意してください。
    また、アトピー性皮膚炎の治療などでも、漢方で治療効果が出てくれば徐々にステロイド軟膏を減らすことができます。しかし、急に止めるとリバウンドを起こし、今まで悪くなかった個所まで悪化することもあります。うまく併用し、必要がなくなった時点で減量していくことが大切です。あせらずに医師とよく相談し、指示通り服薬してください。

  • Q15

    漢方薬と西洋薬を併用しても副作用は大丈夫ですか?

    A15

    漢方薬と西洋医学の併用については歴史が浅く、よく分かっていない部分が多くあります。慢性肝炎の治療に用いるインターフェロン療法と小柴胡湯はどちらも慢性肝炎に対する治療効果が証明されている薬です。しかし、併用すると間質性肺炎という重い副作用を起こしやすいとされ、併用してはいけないことになっています。また、イレウスの治療に使う大建中湯と糖尿病の薬であるグルコバイ、ベイスンといった薬の併用は大腸に異常なガスを発生させる危険性が警鐘されています。
    また甘草の副作用が、利尿剤や強力ミノファーゲンによって増えることも指摘されています。現在服用している薬、受けている治療についてきちんと知ったうえで、漢方を出してくれる先生と相談してみてください。